病気とワクチンのことや、日々感じたことを綴るなだクリ院長のコラムです。
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G, Lack. J Allergy Clin Immunol 2008;121:1331-6
これは、食物アレルギーの発症機序を示す仮説の図です。
卵、ミルク、ピーナッツなどの食物が皮膚に触れることで食物アレルギーが誘導され、
一方、食物を口から摂取することで食物アレルギーを抑制するというものです。
これまで、食物への感作は、口からの摂取を通して起こると考えられ、食物アレルギーを予防するためには、その食物を食べないことが重要であると考えられてきました。しかし、近年の動物実験、ヒトでは炎症のある皮膚にピーナッツオイルを外用していた幼児にピーナッツアレルギーが多いこと、アジア、アフリカの妊娠期、幼児期よりたくさんのピーナッツを食べる国ではピーナッツアレルギーが少なく、同時期に除去している欧米ではピーナッツアレルギーが多いことなどから、この仮説が現在支持されています。
食物(母乳に含まれる微量のもの)が皮膚(特に顔面の湿疹)に触れることで食物アレルギーが誘導されるということは、逆に言うと、湿疹をしっかり治療しておけば食物アレルギーの発症を防げる可能性があるということになります。
そのため、乳児期の湿疹を可能な限り早期(生後3ヶ月まで)に治療することが食物アレルギーの予防のために重要となります。
実際、乳児湿疹や乾燥肌の診断で不十分な治療により皮膚の状態が悪いと、生後3ヶ月頃から卵、ミルク、小麦などへの感作を認めます。
そして、皮膚の状態が悪ければ悪いほど、たくさんの食物への感作を認めます。
湿疹を認めるお子さんは、早めの受診をお願いします。
*感作とは、体内でアレルギー反応の準備ができてしまうことです。
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漢方薬=苦い・飲みにくいと思っている方は多いと思います。
そこで、どのくらい苦いのか?どうしたら飲みやすくなるのかを試してみました。
今回試した漢方薬
葛根湯(カッコントウ)・・・・・・・・風邪 副鼻腔炎
五苓散(ゴレイサン)・・・・・・・・・下痢 胃腸風邪
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)・・中耳炎
小柴胡湯(ショウサイコトウ)・・・・・風邪 熱が2、3日続く時
麦門冬湯(バクモンドウトウ)・・・・・乾いた咳
麻黄湯(マオウトウ)・・・・・・・・・風邪のひきはじめ インフルエンザ 乳児の鼻づまり
17種類の食材で試しました、結果は下記の表の様になりました。
◎・・・ほとんど漢方の味がわからない
○・・・漢方の味がしますが、まあ飲める
△・・・漢方の味がしっかりします、でも飲める子もいるかも
×・・・まずい
白湯 オレンジジュース リンゴジュース 牛乳 カルピス ココア 炭酸飲料(レモン味) 麦茶 野菜ジュース チョコアイス プリン ゼリー ヨーグルト いちごジャム はちみつ メイプルシロップ 砂糖 五苓散 △ ◎ △ ◎ △ ◯ ◯ × ◯ ◯ ◯ △ ◎ ◎ ◎ ◯ △ 十全大補湯 △ ◎ ◯ ◎ △ ◎ ◯ × ◯ ◎ △ × ◎ × ◯ △ × 小柴胡湯 ◎ ◎ ◯ ◯ ◎ ◯ ◯ △ △ ◎ ◯ △ ◎ ◯ ◯ △ △ 葛根湯 × ◎ ◎ ◯ ◯ ◯ ◯ × ◯ ◯ ◯ × ◎ ◎ ◎ △ × 麦門冬湯 × ◎ ◯ ◎ ◎ ◯ ◯ △ ◯ ◎ ◯ ◯ ◎ ◎ ◎ ◯ ◯ 麻黄湯 △ ◯ △ ◯ ◎ △ ◯ ◯ △ ◎ △ × ◎ △ △ △ × *食物アレルギーのあるお子様は、食材の選択に注意してください。
*1歳未満のお子様には、はちみつは使用できません。
総評
・ヨーグルトは酸味が苦味を消してくれるのかどの漢方薬も飲みやすかったです。
・チョコアイスは味が濃く、苦味をごまかしやすいと思います。
・オレンジジュース・牛乳も万能です。炭酸飲料も以外にいけますよ。
・ゼリーは桃味で試しましたが・・・。違う味ではどうでしょうか???
・味覚は十人十色なので、お子様の好みに合ったものを選んでみてくださいね。
飲みやすくするため、参考にしていただければ幸いです。
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ペリアクチン(一般名:シプロヘブタジン)
ポララミン(一般名:マレイン酸クロルフェニラミン)
テルギンG、クレ・ママレット(一般名:クレマスチンフマル酸塩)
来院されたお子さんのお薬手帳を見ると、かなりの確率でこれらの薬が処方されています。
これらは抗ヒスタミン薬と呼ばれるものです。ヒスタミンはアレルギー反応に関わる物質であり、本来、風邪には効果はありませんが、これらの薬の抗コリン作用を期待して風邪に使用されています。
では、抗コリン作用とはどんなものでしょうか。抗コリン作用とは、神経伝達物質のアセチルコリンの働きを抑制する作用で、全身に色々な作用を及ぼします。具体的には眠気、分泌腺からの分泌抑制、便秘、胃部不快感などが挙げられます。身体にとって良くない作用ばかりのようですが、風邪には鼻腺からの分泌を抑制することで鼻水を抑える作用を期待して使用されているのです。
ここで鼻水について考えてみたいと思います。
鼻水は健康なときでも鼻の中の腺や細胞から分泌され、吸った空気を加湿したり、空気中の異物を除去するフィルターのような作用があります。ウイルスが鼻の粘膜に感染すると、ウイルスを排除するために白血球などの細胞が伝達物質を出し、鼻腺からの鼻水分泌を増やしたり、周囲の血管から必要な成分がしみ出してくるため鼻水という症状が出現するのです。つまり、風邪のときの鼻水は身体を守る反応なのです。
『鼻水はこどもの味方!!』
それを抑えてしまっていいのでしょうか!?
自分は決して良いとは思わないので、これらの薬は一切処方しません。
とは言うものの、自分も数年前までは、これらの薬を疑いもなく処方していました。研修医のときに風邪には「アスベリン(咳止め)、ペリアクチン(鼻水止め)、ムコダイン(痰切れ)」と教えられるからです。文頭の薬が世間でかなりの確率で処方されているのも、多分そのためだと思います。
数年前、自分はひとつの文献にふと出会いました。
それまでの自分は、何か処方しなければいけない、処方することが医者の仕事という観念に縛られていましたが、この文献との出会いをきっかけにこどもに関わる多くの方々に正しい知識を提供し、判断ができるようにサポートすることが小児科開業医の役割なのだと考えるようになりました。そして、地元岐阜市で開業することを決意したのです。
こども達のために 適切な薬を選択・提案していく診療を目指していきますので、お気軽にご相談ください!
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インフルエンザの流行が本格的になりつつあります。
病気の診断・治療のために来られた病院や診療所で、新たな感染症をもらってしまったらやり切れませんよね。当院は院内感染の予防に力を入れております。
インフルエンザウイルスは、主にくしゃみや咳の飛沫(気道分泌物)で感染します(飛沫感染)。この飛沫は1-2mほどの範囲に広がります(逆にそれ以上は広がらないので、離れていれば飛沫で感染することはありません)。また、飛沫の付いたモノに触り、その手で口・鼻・目などを触っても感染します(接触感染)。そのため、今週始めより感染症待合室をパーテーションで2つに分け、インフルエンザ疑いのあるお子様は写真奥の待合にご案内し、診察室も別とさせて頂いております。
このようにインフルエンザウイルスの感染経路は主に飛沫感染と接触感染ですが、気密な部屋で空気が乾燥していると、長時間ウイルスが浮遊してしまい、離れていても感染してしまうことがあります(空気感染)。当院内では複数の加湿器をフル稼働して湿度を50%以上に保ち、換気も行っておりますのでご安心ください。
ただ、感染予防には皆様のご協力も必要となります。感染症状のある方は、マスクの着用と来院時の手洗い、手指消毒をよろしくお願いいたします!
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こどものアレルギーは成長に伴って症状がだんだん変化していく特徴があります。これをマーチ(行進)にたとえて、『アレルギーマーチ』といいます。
たとえば、赤ちゃんのときに食物アレルギーやアトピー性皮膚炎がみられると、3歳ごろに気管支喘息がみられ、その後、アレルギー性鼻炎・結膜炎がよくみられます(全員がなるわけではありません)。そのため、このアレルギーマーチを防がなければいけません!
では、どうしたらいいんでしょう。
乳幼児のアトピー性皮膚炎の約7割は食物アレルギーが関与し、1歳を過ぎる頃からダニに感作(アレルギー反応を起こす準備が整うこと)されます。ダニアレルギーは気管支喘息に大きく関与するので、ダニへの感作を防ぐことがアレルギーマーチを止めるのに重要となります。
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年が明け、本格的にインフルエンザの流行が始まりました。
(岐阜市の流行状況はこちらでみることができます。)
現在のところ、昨シーズン同様AH3亜型(A香港型)が最も多く検出されています。
当院でも1月6日から連日インフルエンザにかかられたお子様が受診されています。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが気道上皮に感染して発症し、上気道炎(鼻からのどの炎症)、気管支炎、肺炎などを引き起こす病気です。それにより、発熱や咳、鼻水がみられ、風邪(他のウイルス感染症)に比べ、だるさ、痛み(頭痛、関節痛)、腹痛・下痢・嘔吐などの消化器症状が多くみられるのが特徴です。また、こどもには異常言動もしばしばみられます。
早期に抗インフルエンザ薬を開始することで症状を軽くすることができますので、疑いがあれば早めの受診をお願いします。
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